演奏してくださる皆さんへ

　生きていくのは大変だなあ、と思う。穏やかに生きたいと思っても、人生には色々なことが起きるもの。燦々と陽光が射していたと思ったら突如嵐がやってくることもある。でも、その試練に立ち向かえば、嵐もいつかは消えさり、また太陽があたりを染め上げてくれる。夜もいつかは朝になる。
　太陽によって明るむ東の空や、魚の尾ひれがキラキラする海、青い空に白いかもめの群、突如として現れる黒い雲や嵐…空気、温度、湿度、風、におい…詩の中で歌われている世界を想像してみてほしい。そしてその時どんな和声が鳴っているか、どんな音楽になっているか、感じてみてほしい。皆さんがたくさん想像して全身で表現する時、聴いている人にもその世界観が届く演奏になるだろう。
　これからきっと遭遇するであろう数々の嵐を切り抜けて、一歩先の新しい朝を迎えていく強さをもち、仲間とともに声を合わせて門出の讃歌を高らかと歌えるように。皆さんにとって、この曲がそんな応援歌になりますように。

上田真樹 Maki Ueda
都立芸術高校音楽科作曲専攻を経て、東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学院音楽研究科博士課程修了。博士（学術）。第12回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第二位入賞。第18回朝日作曲賞（合唱組曲）受賞。初の合唱作品である『夢の意味』（東京混声合唱団委嘱）以来、『終わりのない歌』、『遠くへ』、『あめつちのうた』、NHK全国学校音楽コンクール高校の部課題曲『僕が守る』『ポジティブ太郎〜いつでも始まり〜』など合唱作品を多く作曲。器楽作品には、オーケストラのための『あけぼの』、『抒情小組曲』など。「心に花を咲かせようプロジェクト」において震災復興活動も行っている。現在、国立音楽大学、桐朋学園大学、各非常勤講師。